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和歌山地方裁判所 昭和33年(わ)129号 判決 1958年6月28日

被告人 南浅子

主文

被告人を懲役五月及び罰金参万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金弐百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

被告人は和歌山市畑屋敷雁木町四番地において自己名義で旅館「有田屋」を経営するものであるが

第一、昭和三三年四月三、四日頃右旅館においてかよこと林みきとの間に同女をして同旅館の客を相手に売春させ、その対価を同女が六分、自己が四分に分配する旨契約した上、同女を自宅離屋に居住させ、別表一記載のとおり、同年四月四日頃から同月八日頃までの間前後六回に亘り同女をして同旅館において不特定の男客を相手に性交させ、その対価合計九千八百五十円の内六千三百七十円を取得し、以て婦女を自己の管理する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とし

第二、別表二記載のとおり同三三年四月一日より同月八日頃までの間前後一六回に亘り同旅館において氏名不詳客十数名に対し売春婦ちづこと栗山千津子外四名を売春の相手方として周旋した上同女等が売春するに際しその情を知りながら前記客より部屋代合計一万五百円を徴して同旅館客室を貸与し、以て売春を行う場所を提供し

たものである。

証拠の標目(略)

公訴事実に対する説明

本件公訴事実は被告人が業として判示第二の売春を行う場所を提供したもので売春防止法第一一条第二項に問擬すべきであるというのであるが、被告人が売春を行う場所を提供することを業としたと認むべき証拠が十分でないので公訴事実中右の部分は認められない。

法令の適用

被告人の判示第一の所為は売春防止法第一二条に、判示第二の所為は各同法第一一条第一項に該当し、右は刑法第四五条前段の併合罪であるから判示第二の罪につき各売春防止法第一五条を適用し懲役及び罰金を併科することとし、以上懲役刑については刑法第四七条第一〇条を適用し重き判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内、罰金刑については同法第四八条第二項により各罰金の合算した罰金額の範囲内で被告人を懲役五月及び罰金三万円に処し、なお罰金不完納の場合の労役場留置につき同法第一八条、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 中田勝三)

別表一

番号

売春日時

売春場所

相手客

花代及び部屋代

被告人所得額

1

昭和三三年四月四日

午後一一時頃

被告人方二階六号洋間

年令四〇年位

氏名不詳泊客

花代一、三〇〇円

部屋代一、〇〇〇円

五二〇円

一、〇〇〇円

2

同月六日

午後八時頃

同右

氏名不詳休憩客

花代七〇〇円

部屋代六〇〇円

二八〇円

六〇〇円

3

同日

午後一一時頃

被告人方二階三号洋間

年令二四年位

氏名不詳泊客

花代一、二〇〇円

部屋代九〇〇円

四八〇円

九〇〇円

4

同月七日

午後九時頃

被告人方二階五号洋間

氏名不詳休憩客

花代七〇〇円

部屋代五〇〇円

二八〇円

五〇〇円

5

同日

午後一二時頃

被告人方二階五号洋間

年令二六年位

氏名不詳泊客

花代一、三〇〇円

部屋代八〇〇円

五二〇円

八〇〇円

6

同月八日

午後九時頃

被告人方二階六号洋間

年令二四年位

氏名不詳休憩客

花代六〇〇円

部屋代二五〇円

二四〇円

二五〇円

花代合計五、八〇〇円

部屋代合計 四、〇五〇円

合計 六、三七〇円

別表二

番号

周旋

提供日時

同上場所

売春婦

相手客

花別

周旋

提供対価

昭和三三年四月一日

午後八時頃

被告人方二階洋間

ちづこと坂本又は栗山千津子

年令二五年位

氏名不詳客

休憩

七〇〇円

同日

午後一〇時半頃

つやこと西口昭代

同二五年位

氏名不詳客

六〇〇円

同月三日

午後七時半頃

被告人方一階の部屋

同二七年位

氏名不詳客

八〇〇円

同日

午後九時半頃

被告人方二階洋間

同四七年位

氏名不詳客

六〇〇円

同日

午後一一時頃

陽子こと田中佳子

同二五年位

氏名不詳客

泊り

六〇〇円

同日

午後一一時半頃

礼子こと立花麗子

同二五年位

氏名不詳客

八〇〇円

同月四日

午後一二時頃

同二階梅の間

前記西口昭代

同二二年位

氏名不詳客

八〇〇円

同二階洋間

前記田中佳子

同二四年位

氏名不詳客

八〇〇円

同日

午後一一時頃

マサ子こと内マサ子

同二五年位

氏名不詳客

一、〇〇〇円

一〇

同月五日

午後一〇時頃

氏名不詳客

休憩

六〇〇円

一一

同月六日

午後一〇時頃

年令二五年位

氏名不詳客

六〇〇円

一二

同月七日

午後一一時半頃

前記西口昭代

同二六年位

氏名不詳客

泊り

一、〇〇〇円

一三

同日

午後一一時半頃

同二階梅の間

前記内マサ子

漁師風

氏名不詳客

八〇〇円

一四

同月八日

午後八時頃

年令三〇年位

氏名不詳客

休憩

三〇〇円

一五

同日

午後九時頃

同二階洋間

前記ちづこと栗山千津子

同二四年位

氏名不詳客

二五〇円

一六

前記内マサ子

同二四年位

氏名不詳客

二五〇円

一〇、五〇〇円

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